日本での就職活動を経験した留学生の先輩たちの体験談など、これから就職活動をする皆さんへのメッセージを発信します。
実際の活動内容や苦労した点、事前に準備すべき内容や心構えなど、就職活動を行う上で貴重な情報ばかりですので、ぜひ参考にしてください。

魏 靖庭(ギ・セイ)

就職先:株式会社テクノアソシエ
出身国:中国
出身大学:関西学院大学
専攻:社会学
日本留学期間:2006年4月~2013年3月

日本での就職を希望した理由はなんですか?

日本に来て、最初は日本語学校で2、3年間頑張って日本語を勉強して、日本の生活に慣れました。そして、大学受験にも力を入れて、全国でも有名な関西学院大学に入学することができました。4年の間、数え切れないレポートやテストをやって、日本人学生と同じ基準で授業を受けたり、単位をもらったりしました。そして、日本という国をさらに深く理解して、日本人の友達をたくさん作った私に、「卒業したら帰ります」ということは想像できなかったです。日本社会で自分の居場所を見つけること、つまり会社の内定通知書を手に入れることを、自分の「留学卒業証明書」と位置付けました。


現在の内定先を選択した理由はなんですか?

企業の将来性を見て選びました。外国人留学生の私にとっての将来性は最も重要です。まだ入社はしていませんが、それを知るために様々な業界分析に取り組みました。
テクノアソシエさんは200年の歴史をもち、日本国内営業を中心に発展してきた安定的な企業です。2008年の不況に当たり、売り上げの数字が減っている一方ですが、海外への進出に力を入れようと考えられているそうです。私は、日本国内の川下企業に必要な技術や部品などを提供する卸売業が現在の不景気の状況には、優位だと考えました。例えば、昔から世界に賞賛された日本の製造業は、技術の世界通用や不正流出などが原因で世界での競争力は徐々に弱くなっています。
各企業ならではの技術力が少なくなり、企業間の競争は「独特な技術」から「製品の安さ」へ転換していると見られます。川中にある技術や部品の提供をできる企業のほうが、海外、特に新興国の川中、川下企業に求められている、というのが現状でしょう。テクノアソシエさんは現在、20%弱の売上が海外にありますが、まだグローバル化の始まりであり、進出できる空間が非常に広いと思われます。ですので、今後さらに力を入れて海外に進出すれば、かなり大きなビジネスチャンスになると想像できます。
私は、海外からの留学生ですので、自分の強みを活かすことができる分野の多い、テクノアソシエさんを選びました。


企業に対してどのような自己アピールを行いましたか?

私は、三つの段階で自己アピールする方法を自分なりに考えました。 「日常生活の中にした小さなことを取り上げ」→「小さなエピソードから自分の良いところを示す」→「示した良いところは働くにはプラスになる」という方法です。
自己アピールをするには、正しい自己分析を行うことが前提となります。面接の時、ただ単に「私は真面目です」「私は頑張る人です」と伝えても何も伝わらないでしょう。自己分析をするには、自分自身をよく知ることが大切です。たとえば、「私は将来グローバル人材になりたいです、海外へ出ていきたいです!」と熱くアピールする学生が多いですが、「じゃあ、あなたは英語の会話力は?」「アメリカってどんな国?」「当社は新興国を中心に進出していますが、あなたの行きたいヨーロッパ国への進出はまだ取り組んでないですね」と面接官に聞かれたら、自信満々に答える人はぐっと減っていきます。「やりたいこと」と「できること」を分けて自己分析しましょう。


いつ頃から就職活動を始めましたか?

2011年10月、大学のキャリアセンターで開催されたキャリアガイダンスで、初めて就職活動に触れました。忙しくなったのは12月の学内セミナーです。就職活動を本当に理解できて本格的に取り組んだのは2012年の2月ぐらいです。


何社くらいの企業に応募しましたか?

業界を絞らず、就職活動に取り組みましたので、説明会に行ったのは50社以上です。選考を進めたのは30社ぐらいです。


具体的にはどのような就職活動をしましたか?(利用したセミナーやWEBサイトなど)

(1) 就職サイト(リクナビ、マイナビ、エン・ジャパンなど)に登録すれば、自動的に企業の求人情報が届きます。毎日30~50件ほど来ていました。毎日チェックをしないため、数百件の未読メールが溜まっている人もたくさんいます。必ず見なければならないものではないですが、私はざっくりと読みました。説明会と説明会の間の1時間や、電車に乗るとき、寝る前など、少しの時間があれば説明会の情報を集めました。
(2) およそ90%の力を中小企業に入れて、中小企業を中心に就職活動に取り組みました。この企業が良いかどうかは知名度で判断するべきではありませんので、「大手じゃないと絶対に入りたくない!」という考え方は就職活動には大間違いだと強調したいです。知名度が高くても、その中で働く人にとっては非常に大変な企業はたくさんあるでしょう。
周りの多くの人が大手企業のエントリーシートを頑張って書いている4月頃、私はすでに2社から内定をいただいていました。大手企業のエントリーにはまだまだ間に合いますが、内定のあることで自分の就職活動に大きな自信と安心感を持つことができ、今までのやり方が間違っていないと証明してくれました。


事前準備や企業研究には何を参考にしましたか?また、企業研究で苦労した点は何ですか?

事前準備はというと、スケジュールを効率的に立てることだけでした。私は内定をもらう瞬間までのすべての活動は「勉強と成長」のためだ、と考えています。説明会には特に難しい事前準備をせずに、なるべく多く出席するようにしました。話を聞いて、良いと思ったら選考を進める。もし自分に似合わないと思ったとしても、その業界を知ることだけでも将来の仕事にプラスになるでしょう。
内定された企業の中で一つを選ぶことには大変苦労しました。一つを選ぶためには、企業を深く分析することが必要となります。大学生である我々は実際、業界に対して間違って認識するところが多いです。我々はまだ学生ですので、周りの、正直にアドバイスを言ってくれそうな40代超えている会社員の方や、家族親戚と相談することを薦めます!仕事は一生続くものなので、自分だけで判断するのではなく、業界に詳しい方と相談することが最も良い方法だと思います。


エントリーシートや職務経歴書の書き方で注意した点はなんですか?

(1)、履歴書は自分のいいところを全部アピールするところではありません。質問に対して一つのことをめぐって具体的に書いて、興味を持たせることが大事です。
(2)、履歴書を読む人も私たちと同じ人間ですので、特に文章を専門的に難しく書く必要はありません。自分がすごいと思う文章が他の人には分かりにくいモノかもしれません。私なら、書いた文章を周りの友達に読んでもらって、その後の表情をみて判断します。
(3)、履歴書の面白さも大事です。単なる自分の良いところをアピールするつまらない文章は人を共感させることができないです。履歴書を通し、貴方ならではの物語を述べて、文章を読む人を楽しませてください!


面接の際、特に注意した点はなんですか?

一番大事なポイントは、雰囲気作りでしょう。緊張で体が硬くなって、苦しそうな顔をしながら用意した文章を一生懸命に言う学生より、少しリラックスして、豊かな手振りと表情をしたりする学生のほうがプラスの印象を持たれると思います。
そして、自分のことを「審査されるほう」と位置付けないように。私なら、面接官のことを「新しい友達」と考えて付き合います。一時間ほどの話し合いで、面接官と仲良くして、好きになってもらいます。姿勢などを気になりすぎて、逆に言いたいことを忘れたりするのはもったいないので、基本的な尊重と笑顔を持っていれば、最初に緊張していても面接の途中から自然とリラックスでき、面接官に聞かれた内容を完璧に答えられるでしょう。逆に、最初に完璧な入室と挨拶をして、その後聞かれたことを全く答えられなくて、最後はダメな退室になった学生もよくいますね。


面接ではどのような質問をされましたか?

(1)自己紹介、(2)大学時代に頑張ったこと、(3)志望動機
この三つの質問はどこの会社でも必ず聞かれます。
それ以外、様々な質問を聞かれると思いますので、質問を綺麗に答えるには、正しく自己分析をすることが大前提です。
質問への回答を全て用意することはできません。自分の良いとこを示すエピソードを幾つかを用意すれば、すべての質問に対応できます。ですから、生活の中から自分の良いところを発見したり、正しく分析したりするのが面接対策に大切です。
「今朝の新聞やニュースなどを見ました?」とよく聞かれますが、見てなければ困りますね!そのために、多くの就活生は忙しくても面接の前必ずざっくりと読んだりしますが、実はそうする必要がありません、三ヶ月以内に出た気になるニュースや新聞記事を一つだけを用意したら十分です。「今朝は忙しかったので、ニュースを見られませんでしたが、最近見たニュースの中にすごく気になる事件がありまして、それについて話してもいいでしょうか?」と答えたら、「はい、どうぞ!」と言われるでしょう。以上が私なりの質問の答え方です。


その他就職活動中に困ったこと、戸惑ったこと、印象に残ったことはなんですか?

(1)「入社意思」を聞かれることです。
「うちの会社の内定をもらったら、就活をまた続けますか?」
「いま、選考が始まっているのは何社ですか?」
「当社に対する志望度を教えてください!」
このような質問を聞かれましたら、「御社しか見てないです」と返事しなければならないでしょう。この点では、非常に悩まされました。
(2)内定をくれた会社を断ることです。
第一志望の会社から内定をもらう前に四つの内定通知書をもらいました。その後、「次回の面接にどうしてもきて欲しい、内定を出しますから」と言われた会社も三社ありました。面接の時に「入社希望」を強くアピールした私ですが、断るにはすごく申し訳ない気持ちで、逆に「すみません」しか何も言えませんでした。会社の人に怒られたり、断られたり、優しくされたり、許されたりといろいろあって、とても大変でした。


今後の抱負や将来設計を教えてください。

焦らずに一歩ずつ自分の能力を伸ばしていきたいです。グローバルな人材になることは、簡単なことではないです。海外進出の分野で活躍したいなら、まず国内営業になるのが前提でしょう。ですから、入社してからまず、自分のことを日本人と同じ基準で要求し、日本人に負けないスピードで基本的な仕事を覚えたいです。その過程で、必ず自分に合う分野を見つけると信じています、何事もやってみないと分からないでしょう。今はまだ、あまり遠い先の未来までは考えていないですが、目の前にあるたくさんのすべきことをしっかりとやりたいです。


これから日本で就職しようと考えている皆さんに一言お願いします。

就職活動からもらえるのは「仕事」だけではありません。「業界の勉強」と「社会の勉強」をできる良いチャンスでもありますので、視野を広げて、自分の成長を楽しんでください。


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